土留めとしてのブロック塀⑤:左官職人の助言
ブロック塀編はまだしばらく続く。
前回まででコンクリートの流し込みは終わり、無事に固まった。
一見して平らになっているようには見えるが、恐らくそうはなっていない。
まずはブロックを仮置きしてみて、ちゃんとキレイに並ぶかどうかを試してみた。
1.ブロック一段目の仮置き
(1) コンクリートブロックの種類やサイズ
コンクリートブロックにはたくさんの種類がある。
まず分けられるのが「厚み」だ。
最も一般的なものは100mmで、土地境界の塀によく使われる。
少し厚いもので120mm。
かなり分厚く丈夫なものが150mm。
普通のホームセンターで扱っているのは、せいぜいがこの三種類だと思う。
また、ブロックのサイズは厚み以外は全て共通しており
長さ390mm 高さ190mm
である。10mm分は目地の厚みだ。
次にブロックの形で分けた場合で三種類のタイプがある。
① 基本型
最もイメージしやすいオーソドックスなブロックだ。
縦に三つの穴が空いているもので、塀を作る場合、最も数多く使用する。
② 横筋型
ブロック塀は高く積む場合、鉄筋を縦だけでなく横にも通し、耐久性を高める。
基本型は横に通すための穴はないが、横筋用には横へ通すための穴が空いてい
る。
横筋を通す段は、端を除き全てこのブロックを使用する。
③ コーナー用
これは塀の端に使用するタイプだ。
右でも左でも両方のコーナーに使える。
さらに裏返すことで、横筋用のコーナーとしても使える。
列の末端数✖段数が必要分になる。
(2) 今回使用したブロック
今回作るブロック塀は、土留めとして使用するものだ。
土留めは土と接するため、土からの圧力、土圧が絶えずかかることになる。
これはブロック塀の耐久性が弱いと、最悪塀の倒壊に繋がる恐れがある。
そのため使用するブロックには重量や耐久性が求められる。
最適なのは150mm厚のブロックだ。
これを土留めとして必要な分を購入する。
土留めのサイズとして今回求められるのは
長さ約7000mm 高さ約500mm
であるため、これを満たすだけの塀を作るためには
一列につきブロック17個 400mm✖17個=6800mm
高さブロック3段 200mm✖3個=600mm
となるため必要なブロックの数は
一列17個✖3段=51個
になる。
この51個の内訳を考えると
コーナーブロックが6つ
横筋を1列なので(17-2)=15個
残りは全て基本型 51ー(6+15)=30個
となる。
(3) ブロックの購入
ホームセンターで購入することにしたのだが、150mmのブロックは小さなところでは扱っていないことがある。
多少大きめのところに、事前に電話で問い合わせるとよい。
150mmブロックは1個約15キロだ。
15キロ✖51個=765キロになる。
軽四で積める重量は大体300キロになるので、一度に運べるのはせいぜいが20個だ。
一度に運びたいなら大きめのトラックを用意しよう。
(4) ブロックの仮置き
物件へどうにかブロックを搬入し、コンクリートの上に仮置きしてみた。
一見するとそれなりに見える。
しかしこの塀を横から見たのがこれだ。
微妙にガタガタになっていることが分かるだろう。
これは一応列を揃えようとした結果の写真だ。
しかし列を揃えようとすると
鉄筋が基礎に固定されているため動かせない
そのためブロックの穴に鉄筋が入り切らず、面がずれる
部分が出てくるのだ。
また、目視で見ている限り正確な高さは分からない。
そこで鉄筋それぞれの高さに基準線をつけることにした。
鉄筋に同じ高さの基準線を引ければ、それぞれの高さにどれだけのズレがあるかはっきりする。
2.一段目の施工
(1) 鉄筋への水盛り
鉄筋の水平を出すため、今回は原始的な水盛り法を行う。
必要なものは
バケツと透明なホース
だけである。
写真の通りバケツの中に水を入れ、透明なホースの一端をバケツに入れて固定する。
ホース内に完全に水を満たしておくと、もう一端のホースの水面とバケツの水面が同じ高さになるのだ。
表面張力を活かした方法で、このホースの水面を各鉄筋に、バケツの位置を変えないままペンで印をつける。
するとその印の高さは全て同じ高さが出る。
最後にそれらの印を水糸で結べば水平な糸が張れるわけだ。
(2) 仮置きしたブロックと水平な水糸で高さのズレを測る
水糸を張ることで、基礎部分の高さのズレが明らかになる。
目視で大した差はないように見えたが
最も高いのは列の中央付近
最も低いのは列の両端で、中央と比べて約4cm下がっている
ことが確認できた。
ここで今後取る対策として
高さを列の中央に合わせ、ブロックの下にモルタルを塗る
端ほどモルタルに厚みを持たせて高さを調節する
ことを考えた。
(3) 塀の面を合わせる
塀は完成すれば土留め部分には土を埋め戻す。
駐車場側はそのままになるので、できるだけ面を合わせ揃えたい。
そのためにも基準となる水糸を横に張ってみた。
水糸に合わせて調整しようとしたが、どうしても面を全て合わせることはできなかった。
なぜなら基礎から立ち上がる縦筋の根元は固定されており、ブロックの穴に合わせるには限界があったためだ。
仕方なく、面を完全に合わせることは断念し、一段目の施工に移った。
(4) モルタル練りと一段目の積み上げ
水糸を張り、ある程度の基準が分かったので、完全に面を揃えることは無理でも高さは可能だと思った。
ブロックを固定するためには、モルタルを使って接着していくことになる。
モルタルとは
セメント+砂+水
で出来る粘土のようなもので、乾くと固まる性質があるので、ブロックの接着剤として使えるのだ。
材料をホームセンターで用意し、まずはバケツに
セメント1:砂3
の割合で混ぜ、水を加えていく。
練り上げてできたモルタルを、ブロックの下に敷いて、ブロックを載せる。
水糸に合わせてモルタルを盛り、高さの微調整は水平器を使いながら、ゴムハンマーで叩きながら行う。
単に高さを合わせるだけではなく、ブロック自体の前後左右の水平も取らなければならない。
あとはひたすらこれを繰り返して並べていくのだ。
まずモルタルを練ること自体、今回初めてだった。
① バケツにセメントと砂をスコップですくって入れる。
② 1:3の割合は容量ではなく重量が正しい、しかしいちいち重さを測ってなどいら
れないので、スコップ○杯分で計算する。
③ 水を入れる前にセメントと砂を十分に混ぜる。混ぜる前に水を入れると偏りが生じ
て強度が落ちる。
④ 水を少しずつ加えながら適当な硬さになるまで混ぜる。目安は味噌くらい。
以上の流れでモルタルを練っていったのだが、感想としては
想像以上にモルタルは重く、重労働だ
ということだ。
園芸用のスコップでは手がすぐに痛くなる上に、すぐに使い切ってしまう量しかできない。
今回のようにブロック塀を積む場合は、かなり大量にモルタルを使用するので
トロ舟で練ることが必須
である。
バケツ一杯分くらいを逐一作りながら、ブロックを積んでいく。
バケツ一杯分のモルタルで、ブロックが4~5個積めるくらいの量だった。
これが一段目を並べ終わったところだ。
一段目はとにかく高さを合わせることを最優先にしたため、ブロック間のジョイント部や目地は後から施工することとした。
そのおかげか、高さはかなり修正できた。
両端はかなりのモルタルをブロックの下に敷き、ぐらついたりしないか心配だったが特に問題はないようだ。
とはいえ見栄えの点からは面があっておらず歪みがあるので、どうしたものかと途方にくれた。
しかし、ここで貴重な助力を得ることになる。
3.左官職人からの助言
(1) 外でのDIYは周囲の目を惹く
物件の屋外で作業をしていると、近所の人に声をかけられることはないだろうか。
よくあるやり取りが
この物件を買ったのか、誰が住むのか、前のオーナーはこうだった
などだ。
この物件でもかなりの人と同じやり取りをした。
今回ブロック塀を積んでいると、近くに住む男性から声をかけられ、物件のことや塀のことなどを色々と話した。
話していると塀のことには詳しそう。
どうやら現役の左官職人らしい。
これは幸いとばかりに、このブロック塀の出来や今後の対策など、疑問に思っていたことを根堀り葉掘り質問した。
これが非常に大きな助けとなった。
(2) プロからの助言、今後のリカバリー方法
① 土留めとしての強度
問題なし。
今回程度の土留めであれば、150mmのブロックを使っていれば十分に強度は出
る。
② 基礎に型枠を組むべきだったか
不要。
掘った穴に直接コンクリートを流し込むことはよくある。
ただその場合でも水糸で水平は出しておく。
③ 基礎の水平を出すにはどうすれば良かったか
杭が打ちづらい場合は、穴の両端に鉄筋を打ち込んで水糸を張る。
その糸に合わせてコンクリの面を調整して均等にならす。
水平にならせたら、コンクリが固まる前にその鉄筋を抜けばよい。
④ 面を合わせるにはどうすればよいか
一段目は鉄筋の付け根を動かせないが、二段目以降は鉄筋を曲げて調整可能。
二段目は一段目とはズラし、面を合わせることを優先して置く。
一段目は半分埋め戻して見えなくなるので、多少のズレは分からない。
面を合わせるため、先に両端に基準となるブロックを置いてその前面に沿って水糸
を張る。
二段目と三段目で徐々に調整し、三段目で完全に合わせることを目指す。
⑤ 横筋をどこに入れるか、ブロックの中にモルタルはどこまで詰めるのか
三段なら横筋は最上段が基本。
一段目と二段目はブロックのジョイント部分にのみ、モルタルを詰めれば十分。
⑥ ブロック塀の化粧方法
最終的に面の段差が目立っていても、表面にモルタルを塗ることで、段差をならし
て誤魔化すことは可能。
以上の貴重なアドバイスを受けることができ、今後の方針が明確になった。
4.人との出会いを活かす
今回職人さんと出会えたのは非常に運が良かった。
悩んでいるところにここまで適切な助言を得られる機会はそうそうないだろう。
また左官職人ということで、漆喰やタイル張りのプロでもある。
そういったスキルもDIYをする上では必ず役立つ。
いずれそういった技術を学ばせて貰う機会を得るために、こういった機会は大切にしい。
そのためにも、基本的なことだが
近所の人との挨拶、関係づくり、人当たりの良さ
などを疎かにしてはならないと実感した。
今後の物件運営においても活きてくる部分だ。
この点を誤ると無用のトラブルを引き起こすことも考えられる。
常に肝に銘じたい。
↓次の記事↓