DIY大家の覚え書き@TOYAMA

富山にて不動産投資で経済的独立を目指す戦いの記録

書評:「小さな会社・儲けのルール」:竹田陽一、栢野克己

 社長の必読書、と呼ばれているかは分からないが、かなり有名な本だと思う。

 

【新版】小さな会社★儲けのルール

【新版】小さな会社★儲けのルール

 

 

 この本は社長のみならず、小さくても自分のビジネスを持っている人、主体的に生きる人なら誰でも読むべき1冊だ。

 精神的なことだけでなく、具体的で実務的な内容が多く含まれているので読みやすい。

 書かれている内容はあらゆる分野に当てはまるものだが、今回特に響いたポイントを大家業に当てはめて紹介したい。

 

1.営業が商品の2倍のウェイトを持つ。

 経営に必要な要素にウェイト付けをした場合

   商品:営業=1:2

の比率になる、ということ。

 より細かくするなら

   商品関連 27%

   営業関連(エリア、客層、営業、顧客) 53%

   組織関連 13%

   資金関連 7%

となり、商品と営業はお客に直結する部分で、合わせて80%になる。

 逆に組織と資金は会社内部のことで、合わせて20%だ。

 つまり、あらゆる商売において最も力を入れ、リソースを割くべきは、

   営業活動

 ということになる。

 

 これを不動産賃貸業に当てはめて考える。

 商品とは物件である。その価値を高めようとすることが商品関連になるだろう。

 中古の物件であればリフォームが当てはまる、新築なら物件の企画、設計などか。

 私のようにリフォームをDIYで行う場合、ここの比率が極端に高くなることが起こり得る。

 数ヶ月に渡り、毎日のように物件へ入り作業を続ける。

 当然かける時間比率も極端に高くなる。

 リフォームが終われば、大抵の場合は仲介業者に客付けを委託する。

 そこから契約までは、ほぼ業者任せだ。

 そうなると先の比率、商品1に対して営業が2、などにはなりえない。

 「商品10:営業1」くらいがせいぜいだろうか。

 ジモティーなどで自力で客付けをする場合、この比率はもっと高まるとは思うが、それでも商品が営業を上回ることは少ないだろう。

 

 不動産賃貸という業種を考えた場合、営業部分の大部分を委託することは可能である。客付けのみならず、その後の物件管理もだ。

 だが

   商品と営業のバランスがあまりにも偏りすぎていないか

という点を常に考えるべきだ。

 DIYでリフォームをやっていると、どうしてもその部分にリソースを割きすぎる。

 他の部分に力を入れられず、営業活動や既存の入居者対策が疎かになりがちだ。

 商品価値を高めることは当然だが、その商品をお客に知ってもらい、かつ使い続けて貰えなければ商品は売れないのだ。

 営業関連でできることは

  ・マイソクを作ってひたすら業者回り

  ・物件のステージング

  ・物件購入前のマーケティング

  ・物件の清掃、除草

  ・入居者とのコミュニケーション

など多岐に渡り、普段やらないことが多い。

 DIYは成果が分かりやすい仕事だが、そればかりに偏ってはいけない。

 もっとバランスを意識して、リソースを振り分けよう。

 

2.商品の数は一つに絞る。

  「中小企業と屏風は広げると倒れる」

 この言葉が象徴するように、相互に関連のない分野へ次々と手を出し、結果業績が悪化する中小企業は多い。

 得意とする一つの商品にリソースを集中させ、他に手を出すことを戒めている。

 

 限られたリソースをどう割くか。これは企業に限らず個人でも当てはまる。

 何か副業を始めて給料以外からも収入を得たい、と思う人は多い。

 成果の上がらない人の典型は、色々なものに手を出す。

 不動産、転売、アフィリエイト、コンテンツ作成……

 どんなビジネスでもそうだが、最初の1円を得るまでの道のりは非常に険しい。

 数ヶ月は稼げないのが当然だし、数年かかっても珍しくない。

 そこに至るまで、自分の限られたリソースをいくつもの分野に振り分けていたところで、まともな成果が上がるわけがない。

 まずは一つのことに集中しなければならないのだ。

 

 これは不動産を持ち、大家として実績を積んでからも当てはまる。

 リフォームが必要な物件を、同時にいくつも抱えたらどうなるだろう。

 DIYで出来るのは一つだけ、二つ同時に進めることは厳しい。

 また不動産といっても、中古物件、新築物件、木造、RC、住居用、事業用など多岐に渡る。

 それぞれ必要とされる知識はかなり異なる。

 一つで積んだ経験が、そのまま他の分野で通用するとは限らない。

 他の分野に進出するときは、入念な下準備が欠かせないだろう。

 

 

3.人生の方程式「人生=素質×時間^2+実績」

  「経営者は長時間労働が必須」

  恐らく著者がもっとも伝えたいメッセージはここだ。

 人生の方程式とは

   人生=成果・成功・結果

であるとした場合、それを生み出すために必要な要素が「素質、時間、実績」で決まる、とする。

 素質とは言い換えるなら、才能だ。

 能力を伸ばしたり、実績を上げるための効率の良さ、と言える。

 時間はそのまま、かけた時間のこと。

 実績は元々持っている資産、相続で得た財産や学歴、過去の功績である。

 

 ここで考えるべきは

   人生=素質×時間^2+実績

という方程式において、もっとも人生の数値に影響を与える要素は何かだ。

 2乗がついている「時間」である。

 どんなに才能があろうと、時間をかけないことには顕著な結果は出ない、ということだ。

 自分には才能がある、と自信を持って言える人間がどれくらいいるだろうか。

 ほとんどそんなものは持っていない。

 そういった人間は、何よりも時間をかけるしかないのだ。

 

 ではどれだけの時間をかければ結果が出るのか。

 著者は

   他人の約3倍の時間を投入すると大体勝てる、4倍で圧勝

としている。

 この倍率は単に3倍をかけるのではなく、先の方程式に2乗がついている分を考慮し

2倍なら√2を、3倍なら√3をかけて計算する。

 一般的な人の一日の労働時間を8時間、休みを抜かして7時間で計算し、他人の2倍働くなら

   7時間×√2=10時間

となり

   3倍:7時間×√3=12時間

   4倍:7時間×√4=14時間

   5倍:7時間×√5=15~16時間

となる。

 これを1年単位で計算すると、年間休日を100日とした場合

   3倍:3200時間

   4倍:3700時間

   5倍:4140時間

となる。

 次に基準となるのが

   5000時間と1万時間

の法則だ。

 著者は

   1000人の中で上から5位以内になるには累計5000時間

   1万人の中で上から3位に入るには1万時間

をかける必要がある、としている。

 

 

 とにかくこの本では、長時間働くことをせずに成功はありえない、と徹底している。

 私がこれまでに読んだビジネス書で、ここまでこの点を強調するものはなかった。

 著者も書いているが、長時間労働しろ、という主張は受けが悪い

 誰もがもっと効率の良いノウハウがあるはずだ、と期待する。

 しかしそんなことよりも、ある程度の時間を投入することが大前提なのだ。

 

 改めて自分がどれだけ不動産に時間を注いでいるかを考えて見てほしい。

 そして自分がどれくらいの成功を望んでいるか、そのためにどれだけの時間をかけたいと思うのか。

 私は、誰もが長時間働くべきだ、とまでは思わないが高い成果を望むのなら、それに見合った代償は必要だと思う。

 自分が実際にどれだけ不動産に時間を費やしているか、客観的に測定し、そのペースで一年に何時間かけていることになるのか。

 5000時間と1万時間を達成できるのはいつになるのか、明らかになればこのままではいけない、と焦る気持ちも出てくるはずだ。

4.おわりに

 この本に書かれていることは、当たり前のことばかりだ。

 誰でも頭では分かっている。

 しかし、面倒でやれないことが多い。

 読んだ直後はやる気に満ち溢れるのだが、なかなか続かない。

 だから定期的に読み返す、心に刻みつける、行動に移す。

 書かれていることを全てやり通せるなら、どんなビジネスでも成功しないわけがない。

 それくらい濃密だが、困難な内容だ。

 是非一度読んで、実践してほしい。