読書メモ:「印鑑の基礎知識」ー知らないではすまされないー
ナニワ金融道を読むと、書類に書いてある内容も理解しないまま、名前を書きハンコを押すことの恐ろしさが分かる。
そのような認識のために破滅していく人間が、嫌というほど出てくるのがこの漫画だ。
署名と押印はそれほど重要な意味を持ち、考えなしに行えばとんでもない落とし穴にハマる恐れのある行為だ。
そういった危険性がある署名・印鑑について、本格的に調べてみようと手にとったのが今回の本だ。
不動産取引を問わず日常生活においても、印鑑を使う場面は多い。
普段は深く考えることなく押している印鑑だが、その意義について詳しく調べると相当重要なものであることが分かってきた。
今回はこの本から得られた学びをまとめておく。
1.印鑑の意義
・各種書類等にハンコを押す行為は、その者がその内容について責任を負うという意思表示。
・押印時は、当事者がお互いに面前で住所・氏名を自筆で記入しハンコを押すのが原則。
・署名とは自署(サイン)のことで、書類の当事者が手書きすること。
・記名とは当事者が自署以外の方法(ゴム印、パソコン、代筆等)で自分の氏名を記載すること。
・署名だけでも法的な効力が認められる。海外ではサインのみ、筆跡鑑定で証明力が担保される。
・実印とは、個人の場合、市町村へ届け出て「印鑑登録証明書」の交付を受けたハンコのこと。一人1個に限られる。
・銀行印は、企業・個人が金融機関に「印影」を届け出たハンコのこと。
・認印はどこにも届け出をしていないハンコ、しかし法的効力はある。
2.印鑑登録制度について
・個人が、住民票の登録地を離れて印鑑を登録することはできない。
・個人が印鑑の登録をする、しないは自由。
・法人の場合「印鑑の提出」は義務。会社の所在地の法務局に対し、設立時に提出する。
・実印とは印鑑登録証明書・印鑑証明書と照合され同一性を確認される印鑑。つまりハンコが押された文書に証明書が添付されていなければならない。
・不動産登記の場合、証明書の有効期限は作成後3ヶ月以内と規定されている。
・書面を作成しなければ効力が生じない契約として、連帯保証契約、根保証契約、身元保証契約、定期借地契約などがある。
・会社の実印は、代表者1名につき一つしか登録できない。
・会社の実印は、官公庁での手続き、不動産取引、自動車取引、金融機関からの借り入れ、保険金の受け取りなどで必要となる。
3.印鑑に関するトラブル
・書類に「捨印」を押すことは、書類を預ける相手に対し「書類の内容を自由に変更できる権利」を与えるのと同じこと。
・白紙委任状についても同様、外形上正式な手続きで作られた書類になり、責任を回避できない。
・金融機関の預金の払い戻しで、通帳や届出印を持参している人に対して預金を支払った場合、金融機関が「善意」かつ「無過失」の場合、その払い戻しを受けた人が真の預金者でなかったとしても、その払い戻しは有効となる。
4.おわりに
この本は印鑑や署名についての基本的な内容が網羅されている。
こういった内容は学校で教わるものではないが、本来なら誰もが理解しておくべきものだ。
特に不動産の各種契約をすることの多い大家であれば、理解しないままでいると大きな失敗に繋がりかねない。
一度はしっかり学ぶことを勧めたい。