読書メモ:「図解でわかる!減価償却:小野恵」
今年度からは家賃が入ってきているため、確定申告をする必要があるため会計を勉強中である。
しかし今まで触れたことのない分野のため、想像以上に難しい。
単にレシートを集めて会計ソフトに入力していけば良い、と思っていたのは甘かったようだ。
自分で申告する場合、本を何冊か読みある程度会計の理解を深めておかないとソフトへの入力すら進まないだろう。
特に理解が難しいのは「減価償却」の概念である。
今回紹介する一冊は減価償却についての入門書。
非常に読みやすく大まかなイメージを掴むには最適だ。
これを読んだ後であれば、もっと難解で具体的な本も読めるようになるだろう。
1.資産と減価償却
・「資産計上する」とは資産の科目を当てはめ、決算時に減価償却すること。
資産に該当するものは建物、土地、機械、車両など多岐に渡る。
これらは「経費」として一括に計上できるものではない。
また資産にも種類があり、減価償却できるものとできないものがある。
・減価償却できる資産
(1) 業務に使用中の固定資産
稼働を休止している製造機械など、現在使用していないものは償却できない。
(2) 時間経過で劣化する固定資産
建物などは時間が経過すればその分だけ劣化する。
そのスピードに応じて耐用年数が設定されている。
この2つに該当しない「土地」などは減価償却できない。
・個人事業主は毎年必ず減価償却していかないといけない。法人は償却するかどうか任意である。
個人の場合、年度によって減価償却費を調整して黒字化する、または赤字を出すといった融通は利かない。
法人の場合はこの点で自由が効く。
・仕訳とは「2つ以上の勘定科目を使って取引の実態を表す」こと。
正 事務用品100/ 現金100 誤 現金100/現金100
借 方 / 貸 方
・減価償却の仕訳は「直接控除」と「間接控除」がある。
間接控除の場合、累計控除額が表示されるため、過去に遡った分の償却費が分かりやすい。
2.会計と税務の関係
・決算の流れ:決算書作成 → 申告調整 → 確定申告書作成
会計と税務という言葉の違いをどれだけの人が理解しているだろうか。
少なくとも私はこの本を読むまでは意識したこともなかった。
それぞれの主旨については次のように説明されている。
会計の目的:正しい決算書を作ること。 利益=収益ー費用
税務の目的:正しい税金計算をすること。 所得=益金ー損金
決算書は会社の成績表のようなもので、会社の経営状態を明らかにし金融機関や株主に対して説明するための重要な材料となる。
まずはこの決算書を作成することが始まりで、これを元に確定申告を行うのだ。
また利益と所得の違いについても、同じことを言っているようで実は全く異なる概念である。
利益、収益、費用とは会計の概念で、所得、益金、損金は税務の概念だ。
・中小企業はほとんどが、税務上の減価償却費=会計の減価償却費
減価償却費は税務上と会計上で分けることが可能だ。
税務と会計で償却費を分ける理由は、経営実態に合った形にするために行われる。
要は決算書をより良くするため、税務上の処理と変えるといったことだろうか。
しかし税務申告上、それぞれの会社によって償却基準が異なっては都合が悪いため、税務上の償却は法律の基準で行われる。
実際はこの区別を行っているのは大企業だけで、中小企業はどちらも同一の額で計上している。
3.建物のリフォームが「修繕費」か「資本的支出」か。
修繕費に該当するものは大雑把に言えば以下の2つの要素に該当するかどうかだ。
(1) 費用が20万円未満か。
(2) 3年以内の周期で必要な支出か。
この他にも微妙なラインを判断するための区分けはあるが、この2点に該当すれば修繕費。該当しないものは資本的支出と考えればよい。
資本的支出とした場合その減価償却期間をどうするかだが、色々な意見があるようだ。
建物の償却期間を適用し、建物が4年償却なら資本的支出分も4年で償却するパターン。
または高額な支出なら、そのリフォーム部分だけを資産計上して法定耐用年数で償却するかだ。
建物の構造ごとリノベーションするような大掛かりなものであれば、新たに建物を取得した形となり法定耐用年数22年かけて償却するイメージだろう。
だがDIYでリフォームを行う場合、このようなケースは稀だ。
厳密に考えれば資本として計上した部分は個別に償却するべきだろう。
壁紙部分は6年で償却、トイレなら15年で償却するという考えだ。
物件全てに行ったリフォーム総額をまとめれば、20万円など簡単に超過するだろう。
しかしリフォーム作業を個別に計上していけば、20万円を超えることはあまりないので修繕費として計上していける。
ただすぐに償却できない資本的支出が全て悪いかと言われるとそうでもない。
決算書上の経費が減り利益が増えるということは、会社の経営状態は良く見えるということだ。
金融機関から融資を引く場合、この資本的支出を活用して黒字を積み上げるといった方法もあるだろう。
4.おわりに
決算書の作成や確定申告については、規模が大きくなれば税理士にお願いすることも必要となる。法人を設立したのであれば尚更だ。
しかし専門家に委託したからといって、経営者が会計や税務について何も理解していなければ良い経営が出来るわけがない。
一番の勉強は実際に自分で決算書を作り、確定申告してみることだろう。
一度経験してみた上で、どの程度委託するか判断していきたい。