DIY大家の覚え書き@TOYAMA

富山にて不動産投資で経済的独立を目指す戦いの記録

ナニワ金融道から学ぶ資本主義ゲーム

 2020年聖帝zoomセミナーにおいて、聖帝が引用した漫画の一つに

   ナニワ金融道

がある。

 

 

 この漫画についてWikipediaから引用する。

ナニワ金融道』(ナニワきんゆうどう)は、青木雄二による日本漫画1990年から『モーニング』(講談社)にて連載された。単行本全19巻のほか、1999年からは文庫版全10巻が出版された。1992年講談社漫画賞1998年手塚治虫文化賞マンガ優秀賞受賞作品。

 名前だけなら誰もが一度は聞いたことがあるだろう。

 連載されていたのは1990年から1996年なので、私はリアルタイムで読んではいないが有名な漫画なので名前は知っていたが、読むことはなかった。

 聖帝はセミナーにおいて

   読まない、考えない人間がどんな目に会うのか

について、この漫画からいくつかの場面を引用している。

 

hacchi6.hatenablog.com

 

 これまでの聖帝のVoicyにおいても、この作品に言及したことは何度かあったと記憶している。

 

 今回のセミナー受講後、私は早速ネットでナニワ金融道全巻セットをポチり、届いたその日から読み始めた。

 するとどんどんその面白さに魅了され、数日で読破してしまった。

 今回は私がこの作品から学んだことなどを書き連ねたい。

 1.他責で生きる人間は「読まない、考えない」

 この漫画は主人公である街金社員灰原の視点から描かれる。

 大半の流れは

   善良だが無知な人間が、銭の落とし穴にハマり破滅していく

というものだ。

 破滅する人間の大半は、悪意があるわけではない。

 ほとんどが善良な、会社の社長、教師、サラリーマンなどだ。

 ただ善良ではあるが、銭に関する知識は乏しい。

 

 街金に手を出して破滅する人間を描いた他の漫画としては、闇金ウシジマくんが有名である。

 

闇金ウシジマくん(1) (ビッグコミックス)
 

 だが闇金ウシジマくんナニワ金融道では、破滅する人間の方向性が全く異なる。

 闇金ウシジマくんの場合、破滅する人間は

   ギャンブル、浪費、風俗

など金銭的な悪癖を持った人物ばかりだ。

 誰もがイメージしやすい社会の底辺を描いている。

 ここから得られるのは

   ギャンブルなどにハマることがいかに愚かであるか

といった程度の浅いものしかないと思う。

 

 一方ナニワ金融道において破滅する人間に、最初からギャンブル狂などはいない。

 大抵最初は善良な人間が普通に生活を送っている。

 彼らが落とし穴に落ちる原因は

   連帯保証人になる、手形に裏書きする、念書を書く、先物取引に手を出す

など

   本人が意味を理解していない法的な行為

によるものが多い。

 これらの行為は当人がその意味を十分に理解していれば行わない行為なのだ。

 だが彼らは分からない点があるにもかかわらず「読まない、考えない」のだ。

 

 これらの行為によってその人間に対しては、大きな責任がのしかかってくるわけだが、大抵の場合

   そんなことになるとは知らなかった

   こんなものを書かせた相手が悪い、自分は悪くない

などと自分の責任を否定する。

 

 ここから学べることは何なのか。

 自分を振り返ってみると

   読まず、考えもしないまま契約書にサインしたことが幾度となくあった

ことに気付かされる。

 不動産取引、保険の契約、高額の買い物など、ほとんどの場合長々とした契約書の文言に全て目を通すことなどしていなかった。

 これまで大きな失敗をしなくて済んでいるのは、相手方にそこまでの悪意がなかったからだ。

 もし相手がこちらを騙す気でいたら私もその落とし穴に落ちていたかも知れないのだ。 

 そうなっていればきっと私も

   こんなことになるとは知らなかった

と相手を責め、自分の責任を認めようとしなかっただろう。

 

 重要なのは、根本の考え方が「他責」「自責」かだ。

 読まない、考えない人間は大きな失敗をしかねない。

 その原因は「他責マインド」で生きていること。

 「自責マインド」で生きていれば、契約で負う責任を全て引き受ける覚悟があるので、徹底的にその内容を読み、理解しようとするだろう。

2.肉欲棒太郎の事業家マインド

 ナニワ金融道の登場人物の一人に「肉欲棒太郎」がいる。

 彼は登場時は地上げ屋をやっているのだが、結果的には地上げに失敗し、会社を潰して夜逃げする。

 後に彼はヤクザの舎弟となり、競馬のノミ屋で糊口をしのいでいたのだが、再起を図るため新しいビジネスを興そうとする。

 しかしヤクザからカタギに戻ることは簡単ではない。

 ノミ屋としても優秀だった肉欲は周囲から引き止められ、どうしても辞めるなら指を詰めろと脅される。

 指を詰めてしまえば、今後まっとうなビジネスをする上では大きなハンデとなる。

 そのため肉欲は

   指を詰める以外なら何でもします、靴でも舐めます   

と誓う。

 ここで肉欲は

   単に靴を舐めるだけでなく、舌に靴墨を付けてキレイにする

   さらには犬の糞が付いた靴も舐め、糞を食う

のだ。

 この行為によりヤクザも肉欲の覚悟を認め、足を洗うことを許される。

 

 この場面は漫画全編を通しても印象の強いシーンで、ここまでやってのける肉欲棒太郎の人気が高いのも納得である。

 何が彼をここまでさせるのだろうか。

 普通の人間にはここまで屈辱的な行為をする覚悟は備わらない。

 第一に、必ず再起し成功する、という決意・覚悟・夢がなければならないだろう。

 その上で、その計画の障害に対して合理的な選択をし、代償を支払う覚悟を持つことだ。

 肉欲がカタギになるには指を詰める道もあった。

 しかし今後のことを考えれば、それは合理的な選択とは言えない。

 そのため「見栄やプライド」を捨ててでも他の方法を取る必要があった。

 靴を舐めても、糞を食っても許されない可能性はあったが、この行為によって失うものは自分の見栄やプライドだけで済んだ。

 一時的な苦痛に耐えることで、結果的に合理的な選択ができたわけだ。

 

 また彼は新ビジネスの準備段階で、会社の事務所をどこに構えるか、を決めることになる。

 そして山の中にあるボロボロで小さなプレハブ小屋を見つける。

 この小屋はガスも水道も引けない、トイレも風呂もない。

 ここなら安く使えると考えるのだが、共にいた部下は

   かつては20億円を動かしていた社長がこんな小屋から始めるのか

と問うのだが、肉欲は

   自己資金は70万円しかないのだから当然だ

   トイレは野糞、水はポリタンクに汲んでおけばいい

   昔の生活はただの夢、早く忘れろ

と言い放つ。

 

 肉欲の考え方は非常に合理的だ。

 資金が少ない以上、自分らの生活にかかる金は極力切り詰めるべきだ。

 しかし過去には地上げ屋の社長として贅沢な暮らしをしていた身なのだ。

 普通の人間では、感情が小屋暮らしなどに耐えられないだろう。 

 

 カタギになる際の屈辱、小屋暮らしの新生活。

 これらの場面から学べる重要なことは

   感情を捨て、合理的な選択を取れるか

である。

 どちらの場面にも共通しているのは見栄とプライドだ。

 ヤクザにけじめをつける場面ではさらに恐怖も大きいだろう。

 合理的な選択は誰にでも分かるものだ。

 しかしその代償を支払うこと、痛みに耐えることは感情が邪魔をする。

 ではそれを成し遂げさせるものとは何か。

 

 それは恐らく、信念や決意だ。

 彼は事業に失敗しノミ屋に身を落としたが、再びのし上がるチャンスに目を光らせていた。

 芽の出そうな新事業を発見したため、先に挙げたような行動を迷わず取れた。

 これは他責マインドで生きる人間には不可能なことだ。

 確固たる信念、決意を持ち自分の行動の責任を100%負う気がなければできることではない。

 先に述べた「読まない、考えない人間」には絶対にできない。

 ナニワ金融道を通して、この肉欲棒太郎というキャラクターは強烈に輝いている。

 彼ならばどんな失敗に打ちのめされても立ち上がるだろう。

 私自身、小さいながらも事業を営む身として、彼のように生きたいと思うのだ。

 

3.主人公灰原の資本主義ゲームの進め方

 主人公である灰原は、街金の帝国金融の社員だ。

 彼が帝国金融に入社するところから物語は始まり、最終巻頃には入社から4~5年経ち一人で仕事を回せるくらいに成長している。

 物語の後半、灰原が帝国金融の社長である金畑とベンチャー企業への融資をめぐり口論となる。

 そこで灰原は

   僕は入社以来会社に1億円以上の純利益を上げている

と社長に意見する。

 しかし社長は

   その1億は会社の金と看板で御用聞きしたから稼げたにすぎない

   お前の基本給25万は750万のローン1本と変わらん

   お前の価値はその程度だ、思い上がるな

と説教する。

 

 この場面も非常に印象に残る。

 最初は新人で頼りなかった灰原が成長し、金貸しとしての自分の理念を持ち、社長と意見を戦わせる場面だからだ。

 灰原が入社数年で1億以上の利益を挙げた、ということは大きな成果だろう。

 では灰原は金持ちになっているのか、というとそんなことはなく、普通の勤め人のままだ。

 帝国金融の給与システムは基本給+歩合のようで、新規開拓1件につき5,000円が支給されるようだ。

 それとは別に大きな案件を取った場合などは、社長から特別ボーナスが出ることもあるらしい。

 では灰原が稼ぎ出した1億円はどこへ行ったのか。

 もちろん会社のオーナーである社長がそのほとんどを持っていくのだ。

 ここで浮かび上がるのは

   灰原も資本家に雇われている労働者にすぎない

ということである。

 街金のビジネスモデルは、客に金を貸しその利子が利益となる単純なものだ。

 灰原には貸付けや取り立てのノウハウはあっても、貸すためのタネ銭がない。

 また会社の看板に代表されるような、貸主としての信用もない。

 そのため勤め人の範疇に留まっており、何億円の利益を挙げようが、果実は会社に吸い上げられるのだ。

 これはマルクスがいうところの

   労働者が資本家に搾取されている

という形になるだろう。

 灰原も一介の労働者に過ぎないということになる。

 

 では灰原は資本主義ゲームではどの位置にいて、どのようにコマを進めているのだろうか。

 灰原の労働環境は非常にハードだ。

 ときにヤクザに監禁され、暴力を受ける、自分の彼女までも拉致される、などストレスの塊のような労働環境である。

 ここまでやっているのに暮らし向きは豊かにならない。

 だが灰原はいつか独立し、自分で金融屋をやると心に秘めている。

 金貸しのノウハウを吸収し、新規顧客の開拓、審査・貸付け、債権の取り立てなど、ビジネスを最初から最後まで一人で回せるくらいになっている。

 帝国金融は従業員数もせいぜい10人程度のようで、言わばベンチャー企業だ。

 将来的に独立するため、勤め人がビジネスモデルを一から十までパクるには最適だろう。

 次に金銭面。

 独立するには当然タネ銭が必要だ。

 貸金業を開業するため必要な法律上の資産は、ナニワ金融道が描かれた時点では個人で300万円、法人で500万円だったようだ。

 だが現在はこの最低金額が引き上げられ、個人法人を問わず5,000万円が必要となっている。

 もちろんこの最低額だけで運転資金が賄えるわけがなく、勤め人の身から自己資本で全て用意することは不可能だろう。

 そのために灰原は、将来の金主として見込んだマルチ商法で稼ごうとする人間とも関係を作っている。

 また灰原の住まいは、帝国金融の自社ビル内にある部屋を社宅として月3万円で借りている。

 通勤時間はなく、破格の家賃、彼女の朱美とも同居できる環境、福利厚生面では恵まれており、タネ銭を貯められる環境には恵まれている。

 

 まとめると灰原の資本主義ゲームの進め方は

   会社の仕事を最低限で済ませ、余らせた労働力を副業に注ぐタイプ

の方法ではなく

   会社の仕事にフルコミットし、ビジネスモデルをパクるタイプ

になっている。

 タネ銭も貯められる環境にあり、着実にゲームのコマを進めている最中といったところだ。

 できるなら青木雄二先生に灰原が独立するところまで描いてもらいたかった。

 

4.おわりに

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 このナニワ金融道は読み返すたびに新たな発見がある。

 というより、一度読んだだけでは細かい点を理解することはできない。

 手形や抵当権、破産などちゃんとした専門書を読んで勉強しなければ、という気にさせられる。

 事業家ならずとも、人生で落とし穴にハマらないようにするにはどうすればよいか、その考え方を学ぶには最適の作品だと思う。

 これが全巻揃えても2,000円もしないのだから、読まない手はない。

 また作者の青木雄二先生は、漫画以外でも数多くの著作を残している。

 先生の考え方はマルクス主義に根ざしており、とっつきにくいマルクスを学ぶための一歩として使えるものが多い。

 

 とにかくナニワ金融道を読んだことがない人は、すぐにでも読むことを勧めたい。

 絵に抵抗があるなどと考える必要はない。

 そんなことは気にならないくらいに内容が面白く、あっという間に作品へ引き込まれるだろう。

 

 

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