DIY大家の覚え書き@TOYAMA

富山にて不動産投資で経済的独立を目指す戦いの記録

書評:不動産オーナーの「管理法人」超活用術:神山重子

 不動産賃貸業を拡大し続けよう、と思うならば法人化は避けられない。

 その究極的な目的は「節税」である。

 法人化に関する書籍は数多く出版されているが、まずは基礎的な内容が書かれている一冊を紹介したい。

 神山重子著:不動産オーナーの「管理法人」超活用術だ。

 

不動産オーナーの「管理法人」超活用術

不動産オーナーの「管理法人」超活用術

 

 この本を読むべき人

  • 今後法人化を検討している人
  • 法人化に関して初めて学ぶ人
  • 法人化に関して基本的な事項をおさらいしたい人

 

 

 1.不動産法人の形態

(1) 管理委託方式 節税効果 小

 個人所有の不動産の管理を法人に委託する形態。

 一般の不動産業者に対しての管理委託を、自分の法人に委託する形。

 個人から法人に対して管理手数料を支払うことで、個人利益の移転を図る。

 しかし利益の移転は制限なく認められるわけではない。

 管理手数料を家賃の50%に設定したところで、税務署は認めない。

 相場から外れない程度の手数料に留まるため、本書では

   家賃の5~8%

が限界だとしている。

(2) 一括借上げ方式(サブリース方式) 節税効果 中

 個人所有の不動産を一括して法人に貸し出す。

 そこから法人が入居者と直接賃貸契約を結び、家賃収入を得る。

 そして法人から個人に対して、サブリース料を支払う。

 家賃収入とサブリース料の差額分、法人へ利益を移転できることになる。

 この場合法人への手数料は

   家賃の15%前後

が一般的だ。

 またサブリース方式特有のデメリットがあり、一括借上げする以上、物件が満室であろうと空室であろうと個人へ支払う賃料は一定である。

 そのため空室が多くなれば

   サブリース料 > 家賃収入

となるため法人は赤字になりえるのだ。

(3) 不動産所有型 節税効果 大

 最初から法人名義で不動産を所有する。

 家賃収入が直接法人に入るため、形態としてもシンプル。

 3つの形態の中で最も節税効果が高い。

 法人を設立した後の物件は、基本的に法人名義で購入することが原則だ。

2.法人化のメリット・デメリット

(1) メリット

① 所得を個人と法人に分散させることで、所得税率を下げられる。

  個人名義で物件を拡大し続けると、所得税最大で45%まで上昇する。

  反面、法人税最大でも23.2%だ。

  個人が勤め人としての給料を貰っており、さらに家賃収入も加わるとなると法人税

 率を超える収入にまで容易に拡大する。

 

② 役員報酬で所得を自分や親族に分散できる。

  法人の所得を圧縮するために、役員である自分や15歳以上の家族に対し報酬を支

 払う。

  注意点として家族が主婦や学生で扶養している場合が挙げられる。

  家族に報酬を年収150万円以上支払うと

    家族扶養控除枠 一人につき38万円

 を失う。

  また扶養家族が報酬によって年収130万円を超えると、健康保険の扶養から外

 れ、自分自身で社会保険に加入しなければならなくなる。

③ 欠損金の繰り越しが9年間に延長される。

  個人の場合は繰り越しは3年間だが、法人の場合3倍の9年間繰り越しが可能にな

 る。

  そのため利益が出すぎた年は、以前の赤字で埋めることで利益を圧縮できる範囲が

 広がる。

④ 役員の退職金や生命保険を損金として算入可能。

⑤ 交際費が年800万円まで損金算入可能。

⑥ 旅費交通費で日当も損金算入が可能。

(2) デメリット

① 法人設立費用がかかる。

  株式会社であれば約25万円、合同会社なら約10万円

② ランニングコストがかかる。

  法人に利益が出なくとも、毎年の法人住民税7万円は固定。

  税理士費用が、顧問契約すれば毎月1~2万円、決算報酬が一回7~10万円。

3.法人設立の4ステップ

(1) 社名を決める。

(2) 本社所在地を決める。

 自宅が所在地であれば、家賃や光熱費の一部を経費にできる。

(3) 事業目的などを決める。(資本金、目的、役員、決算日)

 役員報酬の金額は年度の期初に決めるが、設立当初は報酬ゼロで問題ない。

(4) 各種設立手続き。

 定款作成、登記、出資、法人口座設立。

4.事業資金の融資について

(1) 新創業融資

 法人設立当初、融資についてまず検討すべきは、新創業融資である。

 これは無担保、無保証で借りられる融資。

 しかしその金利は高めに設定される。

(2) 銀行融資のポイント

  銀行が融資を行う際見るポイントは

    「物的評価」と「人的評価」

 である。

  「物的評価」は物件のスペックで評価されるもので、銀行が好むものは高額な抵当

 権を設定できる物件である。

  担保価値が高いものであれば、もし借金を返せなくなったときも、物件で回収でき

 ると判断する。

  「人的評価」は本人の属性やこれまでの実績によるところが大きい。

  大企業勤めや公務員などは評価されやすい。

  またこれまで堅実に借り入れを返済できた実績があれば、それも評価される。

5.一法人一物件スキーム

 この方法は過去問題視され話題になったため、知っている方も多いと思う。

 ただここで紹介されているのは、問題視された

   金融機関に複数法人を隠す

というものではない。

 複数の法人を設立し、それぞれ一棟の物件を所有することで各法人の所得を年間800万円以下に抑える。

 そうすることで法人税率が22%に留まり減税できる、といった方法である。

 各物件ごとの損益が分かりやすくなるメリットもある。

6.おわりに

 以上紹介したとおり、この本には

   法人化の基礎的な事項

が網羅的に書かれている。

 初学者は手に取る価値があるだろう。

 ただ個別具体的な事項については薄い記述に留まっているため

   節税のための仕分け方法

   法人の具体的な設立手続き

   融資を受ける方法

などを詳しく知りたいなら、それらについてのみ書かれた本を読んでいけばよいだろう。

 

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