書評:「現役融資担当者がかたる 最強の不動産投資法」:河津桜生
物件規模を拡大する上で、金融機関からの融資を考えないわけにはいかない。
この本は、これからの時代に則した融資戦略について書かれている本だと思う。
まず近年話題になった不正融資やグレーなスキームを、紹介している。
代表的なものとして、
スルガショック、かぼちゃの馬車、多法人スキーム、エビデンス改ざん
などが挙げられ、それらの事件を学ぶのにも適している。
その上で今後融資を受けようとする場合、どのような点に気をつけるべきかについて、初級・中級・上級に分けて紹介されている。これまでに融資の経験がない人からメガ大家まで幅広い人の学びになるだろう。
1.初心者はまず公庫と信金から開拓
・日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系の金融機関のため、民間の銀行などとは仕組みが異なる。
民間銀行が融資を出せない物件や、属性の人でも融資を出せることがある。
公庫は基本的に、物件の不動産評価をし、その4~5割までしか融資を出さない。
しかし、「無担保融資枠」が2000万円まである。この枠で借りた場合金利は高くなるが自己資金が10%くらいでも購入が可能。
現在の借入期間は最長でも「10年」。
・信用金庫、信用組合
信金は他と比べて、自己資金の割合が少なくても借りられる。
営業エリアが狭いため、自宅または購入物件のどちらかがエリアに入っていないと融資が出ない。
信金の開拓は、不動産会社や他の大家からの紹介が望ましい。
最初の方法としては、物件を現金で購入し、リフォーム費用の融資を受けること。
ここから縁を作り融資を拡大していく。
2.まずは3期黒字を積む
融資を受けるためには、健全に経営できているという実績が必要になる。節税のために経費計上をしすぎて赤字になってしまえば、金融機関からの心象は悪くなる。むしろ税金はしっかり払う、くらいのスタンスが良い。
しかし赤字なら絶対に融資がでないわけではない。
減価償却費を引いた上での赤字なら、大抵の金融機関は問題ないと判断する。大事な点は
赤字である理由をしっかり説明できるかどうか
である。
融資の難易度
地方の金融機関だと、個人相手よりも法人の方が融資を出しやすい。
どの段階にある人でも、金融機関の担当者に対して
未来のビジョンを語ることができるか
が最重要となる。
未来のビジョンとは
物件の運営方針、想定されるリスク、現在の会社の状況、5年先くらいの事業計
画
について
自分の意見を言語化して伝える
ことである。
3.小さくとも融資を受け実績を積み重ねるのみ
以上が本を読んで、私に響いたポイントである。融資未経験の私にとって数多くの学びになった。これから物件を拡大するため、どういった計画を立てるか考える。
(1) まずは法人の設立
拡大を考えるなら法人は必要だ。今年の秋頃には設立しておく。
(2) 次の物件を現金で取得する
現在は買いづらい市況ではあるが、現金でまずは手に入れる。年内には購入したい
が、買うことを目的にしてはいけない。利益が出る物件を慎重に見極める。
(3) 公庫で「新創業融資」を受ける
新規法人は設立2年以内であれば新創業融資制度の対象となる。リフォーム資金と
して融資が可能であれば受ける。
(4) 信用金庫を開拓してリフォームローンを受ける
公庫と2本立てで開拓を検討する。まずはダメ元でも相談する。ただ可能であれば
誰かからの紹介で開拓したいところ。
以上のような融資計画のイメージが湧いた。
とにかく実績を重ねて、正攻法でいかないと融資は厳しい情勢だ。
ゆっくりでも堅実に進む。裏技的なスキームがあったとしても、惑わされてはいけない。邪道な方法は必ずいつかしっぺ返しを受ける。その例は本書でたくさん取り上げられているので、肝に銘じるべきだ。