土留めとしてのブロック塀⑥:二段目と三段目でズレを修正
前回まででブロック塀の一段目を積み上げた。しかし真横から見ればガタガタな並びになってしまった。
そこで左官職人からアドバイスを得て、二段目以降でその歪んだ並びを修正していくこととした。
1.二段目以降はあえて一段目とズラす
プロの目から見てもらい、少なくとも土留めとしての役割は十分に果たせることが分かった。重量ブロックを使っている上に、鉄筋も入っているためだ。
あとは見栄えをそれなりにすること。そのためにブロックを極力キレイに並べたいが、一段目は鉄筋の付け根を動かせないために融通がきかない。
しかし、二段目以降であれば鉄筋の位置は手で曲げることができるので、ブロックの位置を修正していくことができる。では二段目以降はどうやって並べるのか。
最終的に三段のブロック塀になるが、一段目は掘り返した土を戻すためにある程度隠れる予定だ。そのため一段目が二、三段目とズレていても分からなくなる。
また塀の裏側である土留め部分も土を埋め戻すので、見栄えを考慮する必要はない。
よって二段目以降をズラし、見える前面部分だけキレイに整える、という方向性に決まった。
二段目をキレイに並べるには基準が必要だ。職人さんに教えてもらった方法を使い
列の両端にコーナーブロックを先に置き、ブロック前面の天辺に沿った水糸を張る。
途中の一部にもブロックを仮置きしてズレを確認する。
水糸を固定しているのは、太めの針金をU字に曲げたもの。これを基準の辺に沿わせて水糸を張る。そして全てのブロックが鉄筋の稼働範囲内に収まる位置で、かつ基準線にできるだけ沿う位置を決めていく。
手前の角のブロックが一段目とかなりズレているが、最終的には見えなくなるので問題はない。
2.仮置きで位置が決まれば、モルタルで高さ調整して積む
鉄筋を手で曲げて修正しながら、二段目のブロックを仮置きする。そうしていくと一部では高さが違っていることも明らかになる。一段目でもそうだったように、列の中央が一番高く、左右とも端にいくにつれ低くなるのだ。この点もモルタルを敷く際に厚みを考慮して、少しでもズレを修正していく。
つまり列のコーナーから水糸を張ることで
前面を揃えるための線と列の高さを揃えるための線
が明らかになるのだ。今になって思えばこういった基準線もなしに、どうやって自分は塀を揃えるつもりだったのだろう。
概ね基準が決まったら後はモルタルで積んでいくだけだ。
まずは鉄筋の位置が決まったため、一段目のジョイント部分の穴にモルタルを詰めていく。
モルタルで固めた後に鉄筋を移動させようとしても、できないので二段目を決めてからモルタルを詰めよう。
その後は二段目を積んでいく。ここで導入したのが「ブロック用コテ」である。
三角形で柳刃コテや中塗りコテよりも大きめだ。最初はどうも使い方が分からなかったのだが、何度か試していると、この形状がブロックを積むために洗練されたものだと分かってきた。
ブロックの形に合わせてモルタルをすくえるようになっていて、スコップなどで載せるよりはるかに効率的なのだ。穴の空いたブロックに、モルタルを載せていくのは慣れないと難しく、かなりの頻度でモルタルを落としてしまうのだが、このコテならその作業もしやすい。
できるだけ高さを基準線に合わせながら積み、個々のブロックの水平も水準器で確認していく。ここからの作業は一段目とほぼ一緒だ。慣れない内は一列積むのに数時間かかることもあるだろう。
ただ作業を中断できるのは一列を積み終わったときだと考えよう。列の途中でやめてしまえばモルタルが固まり、後から修正できなくなるからだ。
3.修正の結果、三段目はかなりマシに
そして三段目も二段目と並べ方は同じだ。コーナーを先に置き、基準線を出す。
他を仮置きして、位置が決まれば二段目のジョイントを埋める。後は高さを調整しながら積んでいく。
写真の通り三段目には「横筋用ブロック」を使う。このブロックは見ての通り穴が横方向に空いている。ここに鉄筋を通すことで、縦方向だけでなく横方向にも鉄筋の支えが加わり、耐久性が一層増すのだ。
三段以上のブロック塀なら横筋は必須らしい。また塀の最上段には横筋を入れるらしいので、今回は三段目のみに鉄筋を入れることにした。
またブロック間の目地部分について。目地は基本的に10mm空けておき、ジョイントを埋めるときに整える。しかし今回はその10mmの間隔が統一されていない。元々の鉄筋の位置がかなりズレているので、それに合わせて並べると間隔はバラバラになっていくのだ。
ほとんど目地がない部分もあれば20mm近く空いてしまうところもある。この点はどうしようもないので、ジョイントを埋めるときに無理やりにでもモルタルを詰めよう。目地部分が開きすぎると、隙間から詰めたモルタルが落ちてきやすいのだが、柳刃コテで強引に固める。仕上げは目地コテでならして整える。
その後目地の周辺に付いたモルタルを雑巾で拭き取っておく。そうしないと後からブロックの染みになるからだ。
ここでコンクリートブロックを使った作業時に、必ず用意してほしいのが「革手袋」である。安いもので構わないが、これは個人的に必須だ。
私は最初ブロックの作業時、軍手を使用していた。しかしブロックを運んだり積んだりする作業が、思った以上に手にダメージを与えるのだ。軍手の薄い生地では結構手に負担がかかり、次の日も手のひらに痛みが残るのだ。
またモルタルを扱う場合も軍手では都合が悪い。モルタルはアルカリ性のため、皮膚に付くと炎症の原因となる。軍手ではモルタルが皮膚まで、しみ出てくることがあるので、その点でも革手袋が役立つ。
革手袋のデメリットといえば、指先を使う細かい作業ができないことだが、ブロック積みにそのようなものは必要ないので、是非革手袋を装備しておいてほしい。
そして三段目も完了。前面は遠目からはズレなどは分からないだろう。
これが三段目を横から見た写真である。
次の一段目と比較すると、かなり修正されていることが分かるだろう。
4.おわりに
プロからの的確なアドバイスのお陰で、酷いズレがかなりマシになった。
ここまで来れば後は仕上げの段階だ。
ただこれらの作業は6月から7月にかけてやっているので、梅雨真っ只中であった。作業中雨に降られることもたびたびあり、そのたびにブルーシートをかけたりする作業に追われた。雨が続く日は次の作業に移ることができない。
やはりこれらの左官作業は時期を選んで着手するべきだ、と実感できた。
↓次の記事↓