壁の漆喰塗り③:左官建材屋を訪問、素人こそ専門店へ
前回は左官職人さんから、屋内の漆喰施工についてアドバイスを頂いた。
今回は職人さんから紹介してもらった左官建材屋を訪問し、部材の購入や施工の注意点などを受けたのでまとめたい。
1.建材屋は素人にも親切
職人さんから、出入りしている建材屋については
業者が来るところで一見の客はほとんどいない
ただ現金支払いなら、個人の客も対応してくれるだろう
と聞いていた。
その建材屋については、事前にネットで調べてみたのだが、店のサイトはなく、営業日や営業時間についても載っていなかった。分かるのはグーグルマップからの外観だけ。
正直どんな対応をされるのか不安ではあったが、今後の作業についての方向性も決まっていたので、それを伝え「素人なので教えて下さい」と素直に相談してみようと思ったのだ。
そして建材屋を訪問。小さい店構えながら、私の他に数人のお客さんも居て賑わっているようだ。その人達と比べると明らかに自分の場違い感が拭えない、せめて作業着姿なら溶け込めたか……
私の姿を見ると、すぐに建材屋の男性が声をかけてくれた。
何をお探しですか
と聞かれたので、DIYで漆喰を施工したいことや、下地の状況などを説明していった。
その男性は恐らく建材屋の社長だと思うが、私のどんな素人じみた質問に対しても、非常に親切に説明してくださった。私は身構えていたことは杞憂にすぎなかったことをが分かり安堵したものだ。
2.施工の方針
2号物件で残った壁は、キッチンと物置である。広さはそれぞれ4畳と2畳程度。
キッチンの下地は石膏ボード、物置は化粧合板だ。どちらも漆喰の練習台としてはちょうど良い素材かと思う。
建材屋さんの話では、下地によって施工の難易度は変わってくる。
ここでは、石膏ボードと化粧合板について解説する。
・石膏ボード
石膏ボードが最も簡単だ。何よりもアクが染み出る心配がいらない。
作業の順番は
(1) 壁紙とその裏紙をできるだけ剥がす。
(2) ボードの継ぎ目にメッシュテープを貼る。
(3) 全体に下地材をコテで塗りつける。
(4) 漆喰を塗って仕上げる。
といったものだ。
まず(1)の壁紙と裏紙の剥がしだが、表の壁紙は大抵すぐに剥がせる。しかし裏紙は場合によっては簡単にはいかない。剥がそうとしてもすぐちぎれてしまい、効率が悪いのだ。
必須の道具として「霧吹き」がある。裏紙は薄いもので、水分を含むと糊付けが甘かったところは膨らんでボードから浮いてくる。その部分をスクレイパーなどで削ぎ落としたり、指で擦り落としたりしていく。非常に地味で大変な作業だ。
しかしこの工程は、壁紙を貼り替える場合でも避けて通れない作業だ。ここをいかに丁寧に行うかで仕上がりの質が大きく変わってくるだろう。
漆喰の施工においてもそれは同じのようだ。
こちらのサイトでその失敗が例に挙げられている。塗った漆喰が裏紙の部分だけ膨れ上がるらしい、そうなると漆喰ごと剥がすしかなくなる。そうなってしまうとリカバリーの効かない失敗だ。
(2)の継ぎ目にメッシュテープだが、継ぎ目がボードの収縮をモロに受ける場所なので、メッシュテープで強度を補強する目的だ。壁紙のパテ塗りでも同じ目的で行うものだ。
ここまで終わればコテを使って、下地材と漆喰を壁に塗るだけだ。
・化粧合板
次に化粧合板だが、ここでいう合板とは
こういった古い家屋によく使われている、貼り合わせるタイプのものだ。表面はツルツルしていて目地がある。
こういった合板であっても、漆喰を直接塗ればアクが出るようだ。合板が古ければ古いほどアクを拾いやすいらしい。この合板が下地の場合、作業工程は以下のとおりだ。
(1) 万全を期すなら、合板全体に液体シーラーを塗る。
(2) つなぎ目にメッシュテープを貼る。
(3) 合板用下塗り材を全体に塗る。
(4) 漆喰を塗る。
アク対策のため石膏ボードよりも材料が増え、コストも上がる。建材屋さんの説明では大抵の合板であれば、液体用シーラーまでは必要ないらしい。しかし下地材を塗って乾いた段階で、アクが浮いてくることもあるらしいので、古い合版であればシーラーを塗るのが確実だ、ということだ。
メッシュテープを貼るのは石膏ボードと同じ理屈。
(3)以下の工程は石膏ボードと同じ作業だ。
以上が石膏ボードと化粧合板の作業工程になる。
今回は比較的難易度の低い、石膏ボードから先に挑戦することとした。そこでの経験を踏まえて難易度の高い合板に挑戦したいと思う。
3.必要な材料
今回は石膏ボードに塗るため、現在所持している道具で足りないものを購入した。
上の写真の通り
・粉の漆喰
・石膏ボード用下地材
である。
(1) 粉の漆喰について
建材屋では最もシンプルな、白色の漆喰だけでなく、ピンクやベージュ、水色など様々な色の漆喰も扱っていた。コストの面を考えれば白が最も安い。
また白の漆喰でもメーカーが三社ほどある。違いを聞いてみたが、正直使う人の好みの問題らしい。
今回私が購入したのは富士川建材工業の「白い壁」である。
これは1袋20キロ入りで3,800円だった。
(2) 下地材について
石膏ボードの下地材としては吉野石膏の「C-トップ」を購入した。
これは材質は粉の石膏で水と混ぜて練り、コテで壁に塗るタイプのようだ。話を聞く限り壁紙用のワイドスーパーなどのパテと似たようなものだと思うのだが、何が違うのだろうか。もし壁紙の下地としても使えるなら、非常にコストパフォーマンスが良い。
これは20キロ入りで1,850円、パテに比べると半値に近い。使ってみてその感触を確かめたい。
(3) メッシュテープ
メッシュテープは壁紙で使うのと同じタイプで構わない。
今回購入したのは、「スーパーメッシュテープ」50mm幅で90メートルのものだが800円。これはネットで購入するより安い価格だ。
(4) 左官用コテ
これは壁を塗る用の大きめのものだ。サイズは長さが210mmか240mmのものが1本あれば十分らしい。素材は錆びないというメリットが大きいのでステンレス一択。
コテの大きさや幅が広くなれば、その分値段も高くなる。壁に塗るなら幅が広いほうが作業しやすいが、広めのものは1本4,000円以上する。安いものなら1,000円台からある。
先が尖っているものと、面が四角いものがあるが、真四角の壁に塗るなら好みで良い。円形や細かい部分に塗る場合は先端が尖っているものの方が使いやすい。
4.実店舗の大きなメリット:プロに相談できる
今回は以上の4点を店舗で調達した。漆喰と下地材はホームセンターでも売っていないものだろう。価格の面でネットで購入した場合と比較してみても、正直遜色ない値段だった。送料を考えると実店舗に軍配が上がりそうだ。
それに加えて商品の到着を待たずに調達できる点は強い。
さらに私のような初心者にとって一番大きなメリットは
プロに相談しながら商品を選べること
である。これはお金に替えられないサービスだ。
どんなにネットや本で漆喰の施工方法を調べても、その方法の正しさに確信を持つことは難しい。サイトによっては真逆のことが書かれていることもある。そういった不安を払拭できる強みには替えられないだろう。
もしこういったプロ御用達の店に行くことを尻込みしている人がいれば、臆することなく是非足を運んでほしい。
↓次の記事↓